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税法違反被告事件の裁判を傍聴して No.16(租税裁判所及び租税弁護士の必要性③)

2018/10/15

年齢を重ねた所為か、毎月5日前後と20日前後の2回、このコラムに拙稿を載せさせて頂いていましたが、今月は本日になってしまいました。実は、1年毎の心臓の健診を受けているのですが、その定期健診の折に腹痛を催し、受診中の循環器内科から消化器内科に回して頂き、検査して頂いたところイレウス(腸閉塞)と分かり、即日、入院となってしまいました。イレウスでの入院はこれまで三度していましたが、これで四度目となってしまいました。もう、“あのような苦しい思いはしないぞ”、そして、“早くこのコラムを脱稿するぞ”と誓いつつ本日、午前10時に退院しました。

 

退院する時はいつも“二度とあの苦しみは味わいたくない”ので、日頃の食生活に気を付けるべく、摂取を控える食べ物として退院前に栄養士さんから指導を受けた、繊維性の食物、脂肪分の多く含まれた肉類や魚介等の食物、香辛刺激物、アルコール飲料等のことが当分の間は頭の片隅にあるのですが、一月もしないうちに忘却の彼方に… 何故なら、それらは見事なまでに筆者の大好物だからです。かくして、もう、四度も“七転八倒の苦しみ“を経験してきました。しかし、今度だけは事務所のスタッフ全員の前で誓ったからには、そう易々とはそれを反故にすることはできません。つまらない前置きが長くなってしまいましたが、本題に入ります。

 

さて、本件訴訟におけるように、逋脱犯(脱税犯)は刑事法廷で裁かれるのですが、その際、先ず適用されるべきは一般刑法ではなく、行政刑法としての租税刑法であることは前回も述べたところです。逋脱犯は、納税義務者が偽りその他不正の行為によって税を免かれた場合や還付を受けたことを構成要件とする犯罪であり、租税刑法は、戦後になって特にその罰則が強化され、逋脱犯を含む租税犯について、国家の課税権の侵害という反社会性、反倫理性が強調され、刑事犯と同様、懲役等の厳罰が科されるようなりました。また、近時、立法政策的にも自然犯化の傾向がみられるところです。

 

しかし、そのことは、すべて租税刑法が一般刑事法の範疇にあることを意味しているものではありません。租税刑法は、行政法に属するものの中でも、租税法によって規定され、租税法によって定立された租税法上の法秩序を維持しようとするものであり、これに違反して納税義務を不当に免れ、履行しない等の違反行為者に対して、国が有する徴税目的に反する者として、法律上の厳重な制裁を科そうとするものです。しかし、租税刑法のような、いわゆる行政刑法の適用原則は一般刑法とは区別して適用すべきであるとして、かつては一般刑法理論の全面排除が議論されたり、あるいは純刑法理論の支配を緩和ないし免除すべきとの主張がなされてきた経緯があったことも事実です。

 

ともあれ、この学問領域(租税逋脱罪)の研究に関しては、租税法の体系的理解はもとより、刑法総則に対する理解が不可欠であり、これら両面の深い知識が求められることもあってか、これまで一貫した理論構築を伴う論考は寡なかったように思われます。また、租税法規は専門的であり、その政策性、技術性は租税法上の規範内容を極めて難解かつ不明確なものとし、これを対象とする研究者に加え、租税実務を担う法曹関係者も少なかったこともあり、とりわけ、税に関する情報の非対称性があり、社会的弱者である納税者の権利擁護の観点からは問題があると考えられます。

 

改めて租税刑事事件を含む、租税事件を民事訴訟から独立して専門的に審理する租税裁判所、そして、(仮称)租税弁護士の存在が不可欠であると考えています。(租税裁判所及び租税弁護士の必要性③…了)

文責(GK

 

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