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税法違反被告事件判決への疑問 その3(正しかるべき司法も盲いることがある?)

2019/01/20

このコラムにおいて、ここまで数度にわたって旧関与税理士の責任について触れてきましたが、今回は前回コラムのテーマつながりの法人税の逋脱にかかる責任について述べていきたいと思います。本件事件の判決は、前回も述べた通り、驚くほど簡単に、しかも、詳細な証拠調べ手続を経ることなく、「推認」に基づく事実認定をしたものと思われます。因みに、裁判所のホームページには以下のように掲示されています。すなわち、「刑事事件においては、『疑わしきは被告人の利益にの原則が貫かれていますから、まず、検察官が、証拠によって公訴事実の存在を合理的な疑いを入れない程度にまで証明しなければならないわけです。…これに対して、裁判所は、被告人側の意見を聴いた上で、検察官が取調べを請求した証拠を採用するかどうかを決定、その上で採用した証拠を取り調べます」と。

 

然るに、本件事件において裁判所は、「被告人Aは関与税理士に被告会社の利益(約2億円)を半分(約1億円)程度にするよう指示した」との、「推認」による事実認定をしています。これに関して被告人らは、課税当局及び検察官の取調べ段階で繰返し以下のように供述しています。「(旧関与税理士の処理ミスが原因の)国税局による査察調査が行われた翌日、旧関与税理士が私共の会社事務所に来て、「社長、決算の時の1億円、社長にお願いされてやったって言っていいですか?国税局が怖いので…資格を剝奪されます」(被告会社の利益約2億円を約1億円に圧縮したとされる経緯について)と、当該税理士が被告人らに懇願した事実を述べています(被告人ノートより)。しかし、この検察側にとって不利な事実は、証拠として採用されてはいないようです。

 

既にこれまでに触れているように、平成X3月期における決算修正で計上されていた買掛金(約9795万円)及び未払金(約630万円)が、期中現金主義により経費処理がなされていたため、平成X13月の決算修正前までの試算表上には、本来の当期利益より約1426万円少なく計上、表示されていることになります。と言うことは、期末には前期分の損金としていた約1426万円を振替える必要があります(結果として益金が増加する)が、最繁忙期の中で、当該税理士はそれに気が付かず、そしてそのことを被告人らに理解可能な形で説明できなかったことから、それまで利益は約1億円と聞かされていた被告人らは、申告期日直前の平成X1428日になって突然に利益は約2億円になると関与税理士から告げられ、驚くと同時に強い不信感を抱くに至ったと述べています。

 

これが、前回も述べました、検察側主張の近年に行われていたとされる「利益調整」の実態ですが、これを主導したのは旧関与税理士であることは、証拠上も疑いのないところと考えられます。この他にも、前期に確定している未払法人税等で計上しているものは納付時に当該未払法人税等を減少させる処理をすべきところ、「租税公課」で計上したまま期末までその処理をせず、また、法人税等の中間納付分については、本来、試算表には法人税等として販売費及び一般管理費の枠外に計上、表示すべきところ、租税公課として表示していることにより、試算表の見かけ上は営業利益が減少して表示されていますが、実際にはその分の、隠れた利益が存在することになり、決算時に突然にその分の利益が増加する現象となって(平成X+1年3月期の決算書に)顕在化することになっています。

 

これらについては、いずれも会計に知悉しているなら格別、専門家であっても見過ごしてしまう可能性すらあります。月次試算表(旧関与税理士はこれすら作成していない)と実態とのこれらの乖離を見逃し、ないしは見ずに、納税義務者(被告会社及び被告人ら)に巡回の都度、説明したり、また、決算時にはそれらについて、前もって具体的にその報告や説明すべきところ、それらのアカウンタビリティを怠り、課税当局による税務調査、国税局による査察調査を受けるや、事務所を挙げて事実と異なる証拠を提示したり、供述、証言をすることによって、十分には会計の知識のない納税義務者(被告人)らに責任転嫁を図っていたとしか考えられないところです。この点についても見抜けなかったのか、あるいは、故意に目を瞑って取り上げなかったのか、「正しかるべき司法も盲いることがある?」ように思えてなりません。 (つづく)

文責(GK

 

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