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租税不服申立について(国税不服審判所への審査請求編…その4)

2020/03/09

原処分庁は、請求人の関係法人の全ては事業実体がなかったとしており、就中、本件更正処分の対象とされている本件各関係法人については、答弁書においてその根拠のひとつとして、本件各関係法人の代表取締役については、名目的なものに過ぎないとしています。その一端として、例えば、株式会社KK の代表取締役であったOS氏の申述とされる部分については、世間一般に広く行われている事象を原処分庁に有利に働く表現に誇張して表現したり、虚偽の事実を交えたりして述べています。すなわち、当時の建設業関連の中小企業においては、その労働者が自身の給与の手取り分の最大化を図るべく、天引き部分を最小化する手段として社会保険の加入を回避する傾向が多く見られました。また、このコラムのその1でも触れたように、建設業関連の一次下請業者にとっても、当時の社会保険加入希望者に伴う保険料負担は重いものであり、会社側及び労働者側双方にとって敬遠される状況にありました。

 

このような状況の中で、使用者側、労働者側双方の目的に合致した、すなわち使用者側は社会保険料法人負担分の節減、一方、労働者側は給与手取り分の最大化の実現を目指し、その受け皿となったものが本件各関係法人ということになります。本件において、請求人と本件関係法人との法人間に一定の取引上の関連性が認められることは否定できないとしても、グループ企業間において、いわゆるアウトソーシング(外注)が取り入れられていることは、取引社会においてはごく一般的な事象であり、広く社会に普及しています。また、企業のオーナーと代表取締役が別であり、代表取締役が実質的に経営に参画しない、いわゆる雇われ社長であることも珍しくなく、そのような場合であっても、当該企業が現実に事業を遂行している以上は、法人としての実体を否定することなく取引及びその成果としての所得に課税がなされているところであり、株式会社KKが異常な形態の法人との評価をしなければならない程ではありません。

 

原処分庁が、OS氏が申述したとする後半部分の「旧関与税理士が作成した、私の平成24年分、平成25年分及び平成26年分の所得税の確定申告書において、請求人から給与収入がある旨記載されているが、請求人から給料をもらったことはない。」は、明らかに

事実と反しています。平成25年分及び平成26年分の給与は、旧関与税理士が作成したOS氏の所得税確定申告書に記載されている通り、給与収入があり、株式会社KKから本人口座宛に銀行振り込みがなされており、明確な虚偽表示です。前回も述べましたが、本件各関係法人には実体がないとの原処分庁の主観を強調し、仮装であることをイメージ付けし、偽りその他不正の行為であるとするために、印象操作を超越した意図的な虚偽表示、論理の飛躍が見られ、租税法律主義の観点からは、大きな疑問です。

 

同様に、本件関係法人のひとつである株式会社HG代表取締役SM氏の申述とされる部分についても、答弁書においては、世間一般に広く行われている事象を原処分庁に有利な表現に誇張して表現している部分が含まれており、上記の本件各関係法人株式会社KKと全く同様、特に株式会社HGが異常な形態の法人との評価をしなければならない程ではありません。なお、申述の後半部分において、国税局職員による請求人の悪性を印象付ける目的の誘導と思われる虚偽表現が含まれています。すなわち、株式会社HGが法人設立に当たって、SM氏に代表取締役の名義貸しを依頼し、これに伴う謝礼金を支払ったというものです。これは、全くの事実無根であって、株式会社HGが役員報酬ないし給与として支給したものを敢えて誤導したものと思われます。続くHS株式会社の代表取締役であったOT氏の申述とされる部分についても、世間一般に広く行われている事象でもあり、特にHS株式会社が異常な形態の法人との評価をしなければならない程ではありませんが、ここでも、国税局職員による請求人の悪性を一般に印象付ける誘導による表現と思われる部分ないし個所が目立ちます。

 

原処分庁の答弁書は、取引社会における商慣行についても、課税庁側の恣意的な論理に基づく主観によって取引自体を否定すべく真実にある事実と反する「事実」を展開しています。すなわち株式会社Nは、株式会社Iの下請を担う関係法人ですが、親法人としての株式会社Iが信用上の事情でゼネコンから直接業務を受注することができず、株式会社I、ゼネコン双方からの依頼もあり取引口座のある請求人が、一旦当該業務を受注し、それを株式会社Iが下請する形態を採って契約が成立しています。しかし、受注業務の内容が請求人の本来業務が異なるところから、請求人から同法人の関係法人であるHS株式会社を経由して株式会社Iが請け、さらにそれを同法人の関係会社である株式会社Nに請負わせたものです。したがって、本件は、取引社会における商慣行としての「帳合取引」であって、決して税を免れる目的の仮装取引ではないことは明らかです。

 

また、原処分庁からの答弁書における旧関与税理士の申述とされている「…請求人の関係法人は、社会保険と消費税を免れるために設立した会社だと思っている。」は、同答弁書の2頁前の旧関与税理士の申述「請求人が多数の関係法人を設立していた理由は、社会保険料の支払の関係であるとX氏(社長)から聞いていた。」との申述内容とは矛盾し、原処分庁(当局)による、当局にとって都合のいい部分だけを、しかも誘導(誤導)によって得られたものを表示していると思われ、当局の調査自体の任意性、真実性が大きく疑われる内容となっています。

 

というのも、仮に消費税を免れるために設立した会社だと思うのであれば、税理士法第41条の3「税理士は、税理士業務を行うに当たって、委嘱者が不正に国税等の…徴収を免れている事実、不正に国税…等の計算の基礎となるべき事実…を隠ぺい…仮装している事実があることを知つたときは、直ちに、その是正…助言しなければならない」とする規定に従って、直ちにその是正の助言をしなければなりません。また、税理士法第45条第1項は、「…税理士が、故意に、真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき、又は第36条の規定に違反する行為をしたときは、2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止の処分…」と規定しているところから、何らかの取引(税理士法違反の事実を不問にする等の)があれば別として、そのようなリスクと背中合わせの申述をすることは、一般的にも考えられません。この他にも、旧関与税理士の申述ないし発言(証言)を原処分庁は重要視していますが、それらのすべては同税理士の推測ないし憶測の域を脱していませんが、原処分庁は、吟味することなく、それらを根拠に文章化して証拠として提示して答弁(主張)としています。(つづく)

文責(G.K

 

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