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租税不服申立について(国税不服審判所への審査請求編…その5)

2020/04/18

コロナウイルスの蔓延に伴って、国民の日常生活への影響も少なくなく、審査請求の手続も遅れがちです。暫し別件について触れたこともあり、本題からは離れておりましたので今回からは本題に戻りたいと思います。少し時間も経過していることから、ここで国税不服審判所(以下、「審判所」という。)への審査請求書提出後の大まかな流れについて、確認したいと思います。審判所は審査請求人(以下、「請求人」という。)からの審査請求書を収受すると、原処分庁に対してそれに対する答弁書を要求し、提出された答弁書を請求人に送付します。その答弁書に反論がある場合は、請求人は審判所に反論書を提出しますが、その反論書は原処分庁にも送付されます。その反論書にさらに反論、意見がある場合、原処分庁は審判所に意見書を提出し、その意見書は請求人にも送付されます。この原処分庁の意見書に反論、意見がある場合は、請求人の意見書を審判所に提出することになります。

 

前回に続き、請求人の審査請求書に対する原処分庁の答弁書について触れていますが、原処分庁は、「原処分はいずれも適法に行われており、請求人の主張には理由がない。」とし「原処分に係る調査(以下、「原処分調査」という。)において、次の事実が認められ」るとしています。しかし、当該原処分調査及び原処分庁の主張は、以下に指摘するように、杜撰極まりなく、数々の不合理や疑問があります。すなわち、原処分庁は実質所得者課税の観点から総合的に判断して以下の原処分を行ったとし、その一つとして「請求人と旧関与税理士であるI税理士の事務所の事務員との間でやり取りしたファックス書面について、…と記載されていることからすると、請求人から消費税の免税制度のことで問い合わせがあって、それに対して回答したことは間違いないので、…」とするI税理士の申述を認定しています。

 

また、原処分庁は、「消費税の免税事業者要件に係る税制改正に関し、A氏かT氏からI税理士の事務所に問い合わせの電話があった」とするI税理士の申述も認定しているが、これは原処分調査の真実性が大きく疑われるものであります。何故なら、I税理士は、別件の刑事裁判において以下の供述をしています。すなわち、「自分が、遠慮がちに、関係会社を使って消費税を免れることはやめた方がいい、会社を続けた方がいいと話していたなどと説明していたと教えてもらいました。」続けて「私はそのような電話をした具体的な記憶はありませんが、…云々」と。この供述は、非常に重大な内容であるにも拘らず、本人が記憶しておらず、それも事務員からその重大な内容を話しているのを聞いた、だからそうだと思いますと答えているのです。事務員とのこのようなやり取りがあったとする、いわば伝聞のまた伝聞を、検証することなく事実として認定しており、極めて合理性、信憑性を欠いていると考えられます。また、事務所の離れた場所から受話器を通して漏れる音声の内容を明確に聞き分けることは、通常の人間とって、不可能と考えられ、この点についても極めて信頼性を欠きます。

 

加えて、請求人の元専務であったT氏のメモによれば、I税理士は、S国税局による第1回目の査察調査があった翌日、請求人の事務所を訪れ、AT夫妻を前に、「社長、決算の時の1億円、社長にお願いされてやった(請求人の法人利益約2億円を約1億円に圧縮したと指摘されていることを指す<筆者注>。)って言っていいですか?国税局が怖いので…資格を剝奪されます」と泣きついています。これにつき、当時の社長、すなわちA氏から依頼した事実はなく、I税理士のミスによって、自らが行った決算処理が査察調査で問題視されるや、A氏に依頼されたかのように口裏を合わせて欲しいと懇願しているのです。

 

この他、今回の処分の対象とされている期の請求人の決算の打合せにおいて、T氏のメモによれば、「社長(A氏)、今回の決算の利益はどうしますか?税金を今期で払うか来期で払うかの違いです。税務調査が入らねばいいです。お金が消えていないからいいんです。」と、I税理士が「期ズレ」は許されるとの事実誤認に基づく利益の平準化を勧め、また、「任せて下さい、僕は数字のプロですから」とも発言しているのです。これらの事実をもっても、I税理士が虚偽の申述をすることは十分に考えられ、原処分庁としても、当然ながら、その事実を把握しておきながら、それを検討、考慮等をすることなく、証拠として採用、結果として、誤った法令の解釈・適用をしています。

 

ここにきて、疑うらくは、原処分庁を含む税務官庁とI税理士との(バックルーム)ディールの存在です。加えて、I税理士の事務所の事務員の証言とされる「某日の午前103分に請求人の事務所からT氏発信(と思われる人物)のFaxI税理士の事務所宛に届いた」とするものについては、憶測というよりは、極めて偽証に近いものです。というのも、T氏は、当時、病気がちであった義母の介護や看護をしなければならなかったことから、午前11時までは、特別の用事がない限り、請求人の事務所に出勤することができなかったからです。仮に、このような虚偽表示が国家の機関である原処分庁から示されるとしたら、租税正義の実現は単なるお題目と化すことになり、とても看過することはできません。

 

原処分庁の答弁書におけるI税理士の事務所の事務員、退職した元事務員の申述の要旨とされるものについても、極めて不自然で、ある意図(脱税して蓄えた隠し現預金等の、いわゆるタマリの存在、自白等の直接証拠がない中で、「偽りその他不正の行為」と認定すること)のために、真実の事実を、違う方向に誘導、誇張して間接証拠とし、それを積み上げることで悪性を印象付け、そのような法人やその役員であれば逋脱(脱税)行為もやりかねないとする印象操作をしたものではないかと強く窺わせる内容となっています。

 

これらのI税理士の事務所の事務員、元事務員の申述とされるものについては、客観的な視角からは疑問を越えて偽証したものが多く、それらを国税局職員がさらなる誇張、虚偽表示で上塗り、固めたことを強く疑わせるものです。何故なら、長年にわたる、いわば大切な顧客である関与先の個別信用情報に関することを、税務当局から質問されたとはいえ、税理士及び税理士事務所の事務員には守秘義務があり、答弁書に表示されているような言葉で表現するとは考え難く、仮に、答えたとすれば、それ程の非常識な人物らの申述を何らの躊躇い疑いもなく、窘めることもせず、真に受け、更なる誇張表示する国税局職員の神経が疑われることになるからです。

 

これらの他、請求人からの審査請求書を受けて原処分庁が答弁書に記載している内容は、請求人において既に反論主張している事柄及び本件に限られた事象でもなく一般社会において通常あり得る事象並びに規定等の羅列等であるところから、ここでは必要性あるものに限って取り上げることにするつもりです。(つづく)

文責(G.K)

 

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