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租税不服申立について(審査請求「意見書」編…その1)

2020/09/05

今回から請求人の意見書について述べてみたいと思います。以前にも触れたように、審査請求の段階に移行してからは、請求人の審査請求書に対する反論主張として、原処分庁は、「答弁書」を審判所に提出し、その答弁書に対する反論を請求人は、「反論書」として審判所に提出します。ここまでの手続きについて、前回までに述べてきましたが、今回からは、この請求人の「反論書」に対する更なる反論として、原処分庁は「原処分庁の意見書」を提出し、請求人は原処分庁のその「意見書」に対する再々反論をしていますが、それら双方の「意見書」について述べてみたいと考えています。因みに、原処分庁は、更にそれに対する反論である「原処分庁の意見書」を提出しており、請求人もまたその再々々反論として「請求人の意見書」を提出しており、こうしたやりとりは、原則として、双方の反論が出尽くすまで行うことになります。

 

原処分庁は、請求人の関係法人3社(本件各関係法人)を一括りにして、これらの法人を2年で解散したとし、これと消費税の基準期間のない法人の納税義務の免除の特例とを強引に結び付け、本来、合法的免税期間にも拘らず、偽りその他不正の手段を用いて消費税を免れたと主張しています。これに対し、請求人(併合審理であるため、便宜上、本件各関係法人を含める)は、この主張は誤った事実認定に基づく誤った法令の解釈及び適用をしており、仮に更正処分等を受けるとすれば、更正の理由及び適用される法令の規定は何かについて質問しているが、それらに答えていないと反論しています。また、関係法人のうちの、HS社に対する原処分庁の誤った認識及び虚偽表示を主張、それらが問われているにも拘らず、原処分庁の意見書はこれに正面から向き合って答弁していない旨を指摘しています。

 

というのも、本件各関係法人のうち、2年で解散したのは、KK社のみであって、HG社は、代表取締役であったM氏の一身上の都合で1年で閉鎖するの已むなきに至り、HS社は、2年で解散した事実はなく、現在も法人としての事業を継続しているからです。しかしながら、原処分庁は、答弁書、意見書を通して本件各関係法人を一括りにして扱っており、不正確で自らの主観的、恣意的な根拠(法令)の伴わない主張を繰り返しているのみです。また、原処分庁(側)は、関係者の取調べ、聞き取りの適正性について、概ね以下のように自らの意見書において主張しています。国税局の職員は、関係者の取調べ、聞き取りに当たって、被質問者の申述を省略及び簡略化した事実はなく、その内容について、読み聞かせ、誤りがないことを確認し、質問てん末書に署名押印させていると。しかしながら、形式的には、そうであったとしても、関係者の取調べ、聞き取り、質問に当たって任意性、信頼性に疑義があれば、それは絶対的なものではありません。

 

取調べる側と取調べられる側の精神、心理状態から、取調べる側が期待した回答ではないとき、「それはこういうことだよね、あるいは、そのことはこういうんだよ、分かったね」などと言われ(誘導、誤導され) れば、取調べられる側は、つい「分かりました」と回答するのが常です。現に、請求人の女性事務員は、国税局職員のN氏が請求人の本社に臨場して行われた調査における質問において、以下のように感じたことを述べています。すなわち、N氏は、「どうしてあなたが答えた内容と異なる内容が質問てん末書に記載されているかわかりますか」と質問しています。これに対して、同女は、「署名押印する前に内容の確認はあったが、単純に読んで確認するのではなく、細かく、『この記述はこういう意味ではそうだよね?』、『たまにはこういうのもあったという意味ではそうだよね?』などと行間にそれぞれ意味付けしながら調査官が読んでいったので不自然に感じなかった。」とし、調査官の誤導による署名押印に、結局応じることになった旨を応答しているところから、意見書においてそのことを指摘、反論しています。

 

また、取調べに当たっての誤導と言えば次のような事実も存在しているので、請求人は意見書でこれについても反論、主張しています。すなわち、国税局職員の質問に対して請求人の取引先の法人の代表取締役であるH氏は、「…発行した請求書に係る売上代金は、『請求人の本社事務所へ出向いて社長室のような場所でA社長から紙袋に現金が入れられた状態で受領した旨記憶している。』と応答した」と、質問てん末書に記載されています。しかしながら、受領した相手方のH氏は、「社長か専務かのどちらかだっと思う、場所についてもハッキリとした記憶がない旨を応答したところ、国税局職員(査察官)のS氏は、『受け取ったのは社長だよね、そして場所は社長室だったよね』などと誘導され、そうだったかもしれませんがハッキリとした記憶はありませんと答えたところ、『社長室のような場所でA社長から紙袋に現金が入れられた状態で受領した』と質問てん末書には記載されました」と答え、また、「…『その宛名をHSとしたのも、A社長からの指示に基づくものである。』と応答したことはなく、『では、なぜHSとしたの?』との前記査察官からの質問に、思い付きです。と明確に答えました」と回答しています。

 

このように、原処分庁が答弁書及び意見書において証拠だと主張する「質問てん末書」等には、任意性、信頼性が全くないことから、確認のため本件に係る申述者あるいは供述を録取された人物らに、改めて、国税調査官らにどのような内容の質問をされ、それに対してどのような応答をしたかを確認してみると、申述ないし応答の内容の不正確な記載及び申述内容等と文章化されている表現とのあまりの乖離に驚愕するばかりでした。そこで、これらの点についても、請求人の意見書において、「申述を省略及び簡略化した事実はない。」、また、「原処分庁が認定した事実を総合的に勘案」したとする原処分庁の主張には、疑問がある旨、重ねて反論主張をしています。しかしながら、原処分庁はそれらの指摘、反論に正面から答えることなく、また、反論することもなく、一旦、決着したと思われる事実認定に関する議論を、また蒸し返して主張しています。例えば、請求人の代表取締役であったA氏につき、「…外注する際の具体的な手続きの説明がされていないことからも、A氏は一次下請としての立場で申述したものと評価することはできない。」と主張しています。これについては、原処分庁から開示され国税局職員が作成している質問てん末書において、「関係会社も含めて請求人グループとして私が管理しているという認識を持っており」との応答記録はあるが、原処分庁が主張する「外注する際の具体的な手続き」に関する質問は見当たりません。

 

また、「本件各関係法人が行った作業代金については、請求人に請求させ」といった記述があります。原処分庁から示された質問てん末書及び答弁書のこのような記載内容から、どの部分の何をもって「申述を省略及び簡略化した事実はな」い、あるいは、「一次下請としての立場で申述したものと評価することはできない。」とするのか、その主張は到底理解できるものではありません。同様に、既に退職したかつて関係法人の代表取締役であったO氏の給与収入に関しては、所得税確定申告書控え及び前妻の給与受取証言並びに振込された銀行通帳からも明らかであり、家庭内の私的事情までも交えたものを、原処分庁は総合的に判断したとするが、それは「事情」であって「事実」ではなく、その判断の前提に誤りがあることは、「言わずもがな」であり、請求人の主張に反論若しくは釈明するための原処分庁の意見書の文章とはなっていません。

 

曩にも触れた請求人の女性事務員の別件の申述においても、原処分庁は、「HSという会社の従業員ということになっています」という部分のみを抜出し引用し、その後にある「私としては、請求人とHSで働いていると思っています。」(質問てん末書より)を意図的に割愛、簡略化し、印象操作しています。ここにおいても、否、ここに限定することなく、原処分庁の判断には恣意性、杜撰性、曖昧性が指摘されるところです。(つづく)

文責(G.K

 

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