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租税不服申立について(審査請求「意見書」編…その2)

2020/09/21

課税庁が納税義務者に対し、税務争訟事案の当初段階である更正処分等を行うためには、その大前提として、一般的には、⑴税法の解釈を通じた当該事案に適合する税法規範を明示し、次に、小前提として、⑵税務調査等を通じて得られた事実の認定を行い、その認定した事実を、⑶税法規範(⑴で示したもの)に当て嵌めて結論(判断)を導くという三段階の思考過程を経ることになります。すなわち、⑵の税務調査を通じて事実認定した納税義務者の行為等(実際に存在する事実)を、⑴の税法規範に照らし、⑶の税法規範に反するとの結論が得られるものに限って、課税庁(原処分庁)の更正処分等は正当性を持つことになります。しかし、本件更正処分等は、これまでにも繰り返し述べているように、上述する三段階の思考過程を経て出された結論か否かすら不明であり、その上、結論に至るそれぞれの段階に重大な誤りが存在し、当該結論には大きな疑問があります。それらのうちの⑴の段階である税法規範の明示については、今回の原処分庁の意見書では触れられていないことから、前回のコラムの「意見書」編において述べている、⑵の段階である小前提について、今回も引き続き触れていきたいと思います。

 

原処分庁サイドは、「はじめに結論ありき」で強引に「仮装」等の「偽りその他不正の行為」として本件更正処分等を行うべく、そのための手続を進めており、恣意的で精緻さを欠く、虚偽事実をも含めた杜撰な認定をして、本来、擁護されるべき納税者の権利を侵害していることから、⑵の事実認定には特に大きな問題があると考えられます。それらの原処分庁の意見書の中で、誤って摘示、主張している「事実」ないし「事実認定」については、請求人は、これまでに逐一証拠を示して反証していますが、原処分庁は、その答弁書に対する請求人の反論書、その再反論としての原処分庁の意見書、更にそれに対する請求人の意見書、その意見書に対する再々反論である原処分庁の意見書等において、有効ではない(実際には存在しない)「事実」を採り上げ摘示して、労力や時間を浪費し、唯々無意味、無駄な「蒸し返しの議論」である反論(意見)を繰り返しています。

 

それら個々の無意味な、原処分庁の「事実」の摘示に対して、更に繰り返し詳細に反論することをここではしませんが、原処分庁の意見書の「虚偽的表記、表現がないことは明らかである」とする原処分庁の認識及び主張に対しては、自らの主張が既に論理的破綻を来しているにも拘らず、際限なく事実に基づくことなく反論を繰り返すものであり、徒に審理を長引かせるものであるところから、これらを指摘して、反論したいと思います。原処分庁は、その意見書において、請求人の関係法人とされるHG社の代表取締役であったM氏が、同社を設立するために請求人から謝礼金を受取ったと主張しており、これに対し、請求人は、銀行口座への振込明細書等の証拠を示し、謝礼金ではなく、役員報酬ないし給与として支給していた旨を反証、主張しています。同様に、HS社の元代表取締役であった故O氏の申述に関して、質問てん末書には、「私は自分がHS社の代表取締役であるという認識はあります」との本人の申述に関する記述があるにも拘らず、原処分庁は、これを答弁書に記載せず、その他の直接的な証拠も示すことなく、本人が署名、押印したことのみを強調して請求人の主張を斥けようとしています。なお、本人は、がん組織の脳への転移により、質問調査時点では物事の正常な判断、弁別機能が失われていましたが、原処分庁サイドは当該質問調査を強行しており、自らに有利となるべく、主観的な憶測による誘導をしたことが強く推認され、法律上はもとより、倫理上、人道上にも問題があるものと考えています。

 

原処分庁のHS社への意見書についても触れてみたいと思います。原処分庁は、申述人間の申述内容が一致しないものを、敢えて取り上げ、そのことを根拠として、「仮装」等の「偽りその他不正の行為」が存在したとする結論を導いており、請求人(この場合はHS社)は、そのことの恣意的、危険性ないし誤謬性について指摘、主張をしているところ、原処分庁は、「この主張に理由がない」とする原処分庁の意見書を提出しています。また、原処分庁はその意見書において、旧関与税理士のI氏が「請求人の専務から消費税の免税期間に関して、自分の事務所に電話があった後、ファックスでの問い合わせがあった、と同事務所の事務員が話しているのを聞いた」と申述したと主張しています。しかしながら、請求人の専務からI氏の事務所に消費税の免税期間に係る件でファックスや電話した事実は全くなく、この主張は課税当局とI氏による「創り話」と思われます。

 

当然、請求人は証拠を示して、本申述は虚偽であり、質問てん末書の記載は事実に基づかない、虚偽記載である旨を主張しました。この請求人の反論主張に対し、原処分庁は、「根拠に基づかないものである。」としており、このような動かぬ証拠に対してすら、原処分庁は否定しており、その反論、主張は明らかな虚偽答弁かつ虚偽記載です。このように、本件事案における原処分庁の主張は、不可解、不合理なことがあまりにも多く存在している上に、「仮装」等の「偽りその他不正の行為」を直接に証拠づける何らの物証、自白等も示されていません。このような情況下で、税務当局(原処分庁)が、旧関与税理士のI氏を調べる段階で、税理士としての責任を不問、免責する等の条件を提示し、その見返りに、当局側に有利な証言をするよう強要したと考えても、ある意味においては、納得できなくはなく、実際、そのことを強く推認させる以下の事実が存在しています。仮にそうだとしたら、憲法、刑法その他の法令に違反することになります。

 

当局(国税局職員)が旧関与税理士であるI氏の質問調査時に作成した質問てん末書には、「社長が『そんな税金払えない』と言ったと述べましたが、いつもの期に比べ、利益及び税金の額が多額であり、その金額を社長に伝えた時の社長の表情から私が感じたことで、社長が言っていたことはないですので、そのように訂正してください」との記述があります。質問調査の終了段階での応答として当該質問てん末書には記述されていますが、原処分庁の答弁書にはこの部分の記載はありません。この部分の遣り取りは、旧関与税理士が16億円を上回る売上のある請求人の会社の会計処理に「期中現金主義」を採用しており、決算修正をする5月中旬時点まで利益を算出することをしなかった上に、3月時点の概算の決算報告では当期利益は約1億円と請求人に伝えており、2ヶ月後の決算修整で利益が、当初報告の倍額である約2億円であることに気付き、そのことの報告と処理ミスの謝罪をするため訪問した際の請求人(社長)とI税理士との遣り取りの情況を国税当局に説明したものです。

 

I税理士に対する本件質問調査は、本件更正処分等の事案に係る調査の当初段階で行われており、早い段階で、当局は、請求人が主体的に行動して、関与税理士に税額を減らすことを依頼したものではないことを把握していたにも拘らず、その後、むしろピッチを上げて形振り構わず、「はじめに結論あり」の誤った方針に基づき「強引に「仮装」等の「偽りその他不正の行為」として本件更正処分等を行うべく突き進んできたことを示しています。よって、本件法人税額等の更正処分等を行うに当たって、請求人が「利益を減らすように関与税理士のI氏に伝え、利益が少なくなるように決算書を作成してもらった(I税理士との通謀による利益調整行為)」との原処分庁側の事実認定は誤り、虚偽表記であることが明らかであり、また、「本件利益調整のため」、「本件利益調整を行い」との記載は、質問てん末書にはこのような記述はなく、答弁書作成の段階で原処分庁が「通謀」を加筆、改竄したものと思われます。

 

本件に関わって、関与税理士であったI税理士は、自らの税務処理が、違法、不適切なものであったことを認めた上、これを行ったことについて自らが関与しており、かつ、そのことを自ら認識していた旨を認め、請求人に対し和解金を名目とする金員(損害賠償金)を支払っています。請求人が、原処分庁の主張は不健全ないし不適正な意図に基づく杜撰な調査(計算を含む)が多く含まれており、多くの事実誤認及び虚偽表示等が存在し、結果として、誤った法令の解釈、適用がなされていると主張している所以です。したがって、ここまでの請求人が主張する事実を総合すれば、原処分庁の判断、主張には理由がないと思われます。(つづく)

文責(G.K

 

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