Mobile Navi

税務コラム

税務コラム

税務コラム

 

トップページ > 税務コラム一覧 > 国税不服審判所の役割とその存在意義 その33

国税不服審判所の役割とその存在意義 その33

2022/02/24

蛇足ながら、税務コラムのその30で触れた、審判所がした原処分庁の更正処分の給与手当の過大計上額の「僅かな誤りの指摘」も、審判所が、当該給与手当の過大計上額の計算誤りを発見したのではなく、本件更正処分に先立つ税務調査後の行政指導の一環として原処分庁を含む当局と請求人の関与税理士との打ち合わせを通して決定されていた金額を原処分庁が転記ミスをしたもので、それを指摘したに過ぎません。加えて、審判所を含む租税行政庁が、請求人による給与手当の過大計上額と主張しているものには、既に触れているように、租税行政庁側に重大な認定誤りの問題があり、それを請求人の非違事項という形に矮小化しようとする企みは、法令に違反するばかりではなく、租税正義に反するものであり、国家の一機関としてのなすべき行為ではありません。

 

と言うのも、本件は、原処分庁によって、事実に基づくことなく、根拠も明確にされないまま、売上先に渡す「裏金」から「架空給与」へとその主張をコロコロと変えた挙句に、「給与手当の過大計上額」と認定し、それを最終的には交際費に振り替えられているところ、その実態はA氏(若しくはA氏夫妻)個人が出捐した「販促費の性格を有する売上先の現場責任者への貸付金」であり、貸付の段階では、請求人(法人)の収支には関係しないものです。ところが回収段階では、当該金員が売上先から請求人の売上に上乗せする形式をとって口座振り込みで返済され、請求人からは関係法人への外注費に上乗せして振り込みされていたところから、当時の関与税理士がその処理を誤ったものです。しかし、これについては、平成2711月札幌国税局査察第3部門総括主査YM氏及び主査TK氏らの行政指導にも大きな問題と誤りがあったと考えられます。すなわち、本来、当該上乗せ分は、請求人及び関係法人の売上とは関係なくA氏個人が収受すべき金員であるにも拘らず、受け取り段階で、関係法人の現場責任者の給与の上乗せ分として(源泉徴収分を納付した上で)個人(A氏)が回収する形式を採っていたからです。

 

原処分庁は、当該金員を請求人の「裏金の支出」、「架空給与の支給」、「給与手当の過大計上額」などと、強引に法人(請求人)に関係付けし、一旦、決着させたA氏個人由来の「貸付金」を、再度、強引に法人(請求人)の偽りその他不正の行為に結び付けて、法人の悪質性を作出、捏造することによって、当時の代表取締役であったA氏に誤解と強迫観念を与えました。結局、A氏は言われるままに個人の金員を平成271214日から平成28120日までの期間で、関係法人であるS社宛に強制的に振込入金、清算させられ、決着が図られていたものです。然るに、原処分庁は、令和1107日付で法人格の異なる請求人に対する当初更正処分に先立って、請求人としての給与手当の過大計上問題(請求人と関係法人との法人格の相違、出捐された金員の所有者は請求人か個人か、回収段階での売上ではない入金(返済金)の処理、課税問題等々)を有耶無耶にしたまま、強制的に振込入金させて決着を図っていた当該「販促費の性格を有する売上先の現場責任者への貸付金」と同額を、再度、「給与手当の過大計上額」から交際費に振り替えて請求人に課税しているのです(これは原処分庁による詐欺行為とも評価されます)。

 

しかも、原処分庁は、その業務を継続し法人自体が現在も存続している関係法人であるS社の進行事業年度を、一方的に、何らの合理的理由、証拠及び法的根拠を明示することもなく、請求人の決算期(3月)に合わせて、期中で区切り(S社の決算期1月)、そのうちの利益部分は同法人には実体がないとの正に課税をするためだけの理由を付して請求人の計算と看做し、損失部分はS社にそのまま残した上で、何らの法的根拠のない当初更正処分を令和1107日付で請求人宛に行っているのです。こうした行為は、単純な誤りとしては見過ごすことのできない、重大な違法行為であり、確信的意思を伴う、許されざる公権力の誤用、濫用であり、憲法の規定及びそこから導かれる租税法領域の二大重要原則である租税法律主義及び租税平等主義の理念とも相容れぬ、国家の一機関による犯罪行為とも評価されるものでもあるのです。

 

法人の収支に関係しない給与手当の過大計上額はもとより存在せず、原処分庁における法令無視、違反が明らかである当該違法課税状態は直ちに解消、取り消されるべきです。この状況下にあって、猶も「合理的な理由は認められ」ないとする原処分庁の主張は極めて失当であるとともに、原処分庁の更正の請求を行うことができる期限経過の主張は、国税通則法73条が規定しているところでもあり、理由がありません。本件更正処分に先立つ請求人の税務調査に関連してS関係法人が税務調査を受け、当時の請求人の代表取締役であったA氏個人の金員を強制的にS関係法人の口座に戻し入れさせられて、給与手当の過大計上額の問題については決着済みであるにも拘らず、本件更正処分の対象として、更に約3,550万円が請求人の法人所得の金額に加算されています(詳細については、本コラムその19参照)。これは、租税行政庁による単なる計算誤りの範疇に止まらず、強い故意(悪意)に基づく犯罪行為とも表現できるものではないでしょうか。

 

加えて、原処分庁が疎明、主張する更正通知書別表3の「総勘定元帳に計上している金額」と答弁書の表33「①給料手当勘定」とは使用されている用語、文言に相違があると同時に、金額にも相違があるにも拘らず、原処分庁、審判所の双方とも、両者は「差額が等しく」問題はない旨を主張しています。しかし、本件のような不利益処分に係る租税争訟事案において、更正通知書別表における金額と答弁書の表に記載された金額及び用語が異なっていれば、両者の比較可能性を著しく阻害、若しくは不可能にし、比較対照が困難、若しくは不能となることは明白です。また、穿った見方をすれば、更正通知書別表3に誤りがあり、それを答弁書において密かに補正、修正したことが、請求人等に気付かれないよう、敢えて用語を変更、金額を修正しているとも考えられます。

 

すなわち、「総勘定元帳に計上している金額」を「給料手当勘定」とし、また、「給与明細一覧表の支給額」を「給与明細集計額」とし、そこに更正通知書別表3の「差額」に符合するそれぞれの金額に変更、修正して記載したものとも考えられるからです。この点で、原処分庁がなす請求人の「架空給与」計上の主張は、その証明はおろか疎明にもなり得ないものとなっています。審判所は、法人税に関する計算を誤っていることもさることながら、裁決の前提となる事実認定を丸ごとそっくり原処分庁に依拠し、その誤った認定に基づいて本件更正処分等を判断(裁決)していることから、その立論は論理必然的に誤りであり、当該誤謬は直ちに改められるべきです。

 

裁決書の32頁に戻って、ロ記載の「復興特別法人税」について述べたいと思います。審判所は、「上記イと同様、本件調査に係る調査手続に違法はないとともに、本件各更正処分の理由付記に不備はなく、本件当初各更正処分を取り消し、処分理由を差し替えて本件各更正処分をしたことについての違法は認められず、また、本件各更正処分等は信義則に反する違法な処分であるとは認められないとともに、請求人は通則法第70条第4項第1号に規定する偽りその他不正の行為によりその一部の税額を免れていたものと認められる。そして、本件各関係法人がそれぞれ申告した収益、費用等に係る業務及び取引は、請求人が行ったものと認められ、当審判所において、本件各課税事業年度の復興特別法人税の課税標準法人税額及び納付すべき税額を計算すると、原処分の額といずれも同額となる。また、本件復興特別法人税各更正処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められないから、本件復興特別法人税各更正処分はいずれも適法である。」としています。

 

しかし、これまでにも述べてきているように、本件調査においては、通則法74条の112項の調査の終了の際に義務付けられている調査結果の説明手続を行っておらず、当該調査手続には違法があるとともに、本件各更正処分の理由附記には不備が多く、税額算出の計算過程が明らかでない上に税額の計算にも誤りが多く存在し、しかもその額が多額であり、加えて、本件各更正処分等は信義則に反する違法な処分であり、これらの付従性の観点からも、本件復興特別法人税各更正処分もまた違法な処分となります。また、繰り返し主張しているとおり、請求人が偽りその他不正の行為により一部の税額を免れていた事実はなく、また、審判所は、税額の算出につき原処分と同額としており、仮に同額と主張するのであれば、原処分庁と審判所が共に計算を誤ったか、調査自体を形式的ないしは行っていなかったことになり、この点、本件復興特別法人税各更正処分に対する審判所の判断は極めて適法性を欠きます。

 

このことは、累度にわたって述べてきたとおり、審判所が本件法人税額等及び消費税等の更正処分に係る審査請求における裁決を通じて、原処分庁の事実認定には誤りがなく請求人が提出した証拠資料等によっても、それを不相当とする理由は認められない、とする裁決をしているにも拘らず、実際には、多くの事実認定の誤りや計算誤りがあり、請求人が、更正の請求を経て審査請求を今まさに進めていることが、いみじくも証明するところではないでしょうか。そして、そのうちの一部については、原処分庁が誤りを認め(更正の請求が認容され)、平成283月期の請求人の所得金額が約5,300万円減算され、それに対応する還付金の処理がなされているところです。(つづく)

文責(G.K

 

金山会計事務所 ページの先頭へ