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軽減税率導入論議の行方 その3

2015/10/21
安倍首相は、衆院当選回数15回の大ベテラン野田毅氏を更迭して、衆院当選回数3回、参院に鞍換えして1期目の宮沢洋一氏を新しい自民党の税制調査会会長に抜擢し、消費税率を10%に引き上げると同時に軽減税率を導入する方向で検討するよう指示したと報道されています。 

安倍首相の指示を受けて、自民党の税制調査会では10月16日、宮沢会長が就任して初めての非公式の幹部会合が開かれ、2017年4月の消費税率10%引き上げと同時に、軽減税率を導入することを目指すことが確認され、宮沢会長は、「いかなる形での軽減税率ができるかを、これから、われわれも知恵を出さなければいけないし、また、公明党にも知恵を出していただかなければいけない」と述べています。 

軽減税率をめぐっては、公明党が選挙公約にしている中、前々回のこのコラムでも触れましたが、先に公表されたマイナンバーカードを利用した、キャッシュバックを柱とした財務省案が国民各層からの散々な批判を浴び、事実上、撤回された形となっており、今後、わが国の実情を踏まえて示されるべき自民・公明両党の与党税制協議の具体的な軽減税率制度の姿が注目されるところです。

 公明党は、消費税が10%に引き上げられる2017年4月にこの制度の導入を強く求めていますが、消費者には負担は生じないものの、中小企業をはじめ、事業者には多大な事務負担が生じることになり、事業者はもちろんのこと、そのパートナーである税理士業界も反対の立場であり、与党自民党内からすらも導入への慎重論が根強くあります。このことについて、安倍首相は、宮沢会長に「商工業者などに無用な負担とならない、現実的な解決策」を考えるよう指示していると報道されています。 

しかし、「事業者などに無用な負担とならない、現実的な解決策」はあるのでしょうか?

そもそも軽減税率導入の目的は、消費税が持つといわれる「逆進性」(所得の低い人ほど税の負担率が高くなる性質)の緩和にあり、エンゲル係数で見る限り、低所得者ほど一般に支出の中で食料品等の生活必需品への支出の割合が高いことから、食料品の税率を低くすれば、理論上は、消費税の逆進性を弱めることができます。 

ところが、軽減税率は当然に高所得者にも適用されてその負担を軽減させることとなるので、可処分所得金額に着目して比較すると、むしろ高所得者の方が大きな軽減額を享受することにもなりかねず、所期の効果が十分に上がらない可能性が考えられます。加えて、複数税率を採用することは制度自体を複雑にし、消費税の運用コストを高め、結果として、税収を押し下げることも考えられます。 

最近の新聞報道によれば、軽減税率の対象品目を「酒を除くすべての飲食料品」とした場合には、約1兆3千億円の税収減になるとの試算から、宮沢会長は、公明党が掲げる「酒を除く飲食料品」とするのは困難との認識を示したとされています。また、軽減税率導入に伴う経理方式の見直しについては、当初は事業者の事務負担の少ない簡易な経理方式を採り、段階的に欧州型のインボイスの導入を目指す考えを表明しています。 

軽減税率をめぐる議論はここにきて、「財源」と「事務」の負担を誰がどの程度引き受けるかが国民の最大の関心事となっていますが、この点について宮沢会長は明らかにしていませんが、麻生太郎財務大臣の発言「財務省は反対ですよ、本当は。やれやれって人が多いんだもん。だから問題なんだ。面倒くさいって、みんな言ってるよ。」が軽減税率導入問題の本質を端的に物語っているように思われます。

文責 (G・K)

 

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